「隣の市なんですけど、出張費っておいくらですか」
「えーと……3,000 円くらいでしょうか」
この 3,000 円に、往復 2 時間ぶんの自分の時間は入っていません。入っているのはガソリン代の見当だけです。
出張費は 3 つでできている
ひとまとめに「出張費」と呼ぶから、金額の根拠が消えます。分けると、 それぞれに値段が付けられます。
- 交通費。ガソリン、高速代、駐車場、電車賃。 これは実費で、迷う余地がない
- 移動の時間。撮ってはいないが、働いている時間。 ここが抜けやすい
- 埋まらなくなる枠。往復 3 時間かかる現場を受けると、 その日はもう 1 件入れられない
3,000 円では足りていません。差額の 3,200 円は、 毎回どこからか持ち出しています。
移動の時給を決める
まず、撮影そのものの時給を出します。
撮影料 20,000 円で、現場の拘束が 2 時間、選別と現像が 2 時間。 合わせて 4 時間なので、時給 5,000 円です。
移動をこれと同額にすると高く見えますし、実際そこまでは請求しにくい。半分の 2,500 円あたりが出発点になります。運転中は 手も頭も塞がっていて、他の仕事はできません。ゼロにする理由がない。
電車なら少し下げてよい
電車移動なら、車内で返信や選別ができます。できる仕事の量で決めるのが素直です。
距離ではなく、時間で区切る
「20km まで 3,000 円」のような決め方は、必ずずれます。同じ 20km でも、30 分で着く道と 1 時間半かかる道があります。市街地、渋滞、駐車場探し。距離は所要時間を教えてくれません。
| 片道の所要時間 | 出張費 | 考え方 |
|---|---|---|
| 〜30 分 | 無料 | 営業の範囲として飲み込む |
| 〜1 時間 | 3,000 円 | 往復 2 時間ぶんの一部と、交通費 |
| 〜2 時間 | 6,000 円 | その日は 1 件しか入らない前提 |
| 2 時間超 | 個別に見積もり | 宿泊や前泊が絡むので、表に載せない |
時間はスマホの地図で調べられます。申し込みのときに住所を聞けば、その場で決まります。
「無料の範囲」を必ず作る
全部の距離で取ろうとすると、「出張費いくらですか」が毎回の交渉になります。
「◯◯市内は無料です」と言えるほうが、聞く側も気が楽です。そして無料の範囲の外側は、堂々と請求できます。線が引いてあるから請求できる、という順番です。
実費は実費と言い切る
高速代と駐車場は出張費に含めず、別に実費でいただくほうが揉めません。金額が現場で変わるからです。
- コインパーキングは時間で伸びる。長引いた撮影ほど高くなる
- 高速代は経路で変わる。下道で行けば 0 円になる
- 神社やホテルは、そもそも駐車場が有料だったり、無かったりする
「出張費 3,000 円+駐車場などの実費」と書いておけば、当日 1,500 円 余分にかかっても説明が要りません。含めてしまうと、毎回こちらが賭けをすることになります。
遠方は、別の商品として考える
片道 3 時間を超えると、出張費の延長では足りなくなります。前泊、宿代、 翌日の予定が潰れること。これは「出張費」ではなく「遠方撮影」という別の受け方です。
表に載せず、「ご相談ください」にしておくのが正解です。載せた瞬間に、その値段で受けることになります。
最初に組んでおく理由
出張費はいちばん値上げしにくい項目です。撮影料なら 「来年から改定します」と言えますが、出張費を上げると 「同じ場所なのに高くなった」と見えます。
だから最初に、実際にかかっている額から組んでください。感覚で置いた 3,000 円は、そのまま何年も残ります。



