編集中の写真を映したディスプレイと、色見本

どこまで直すか、を先に決める

「ちょっと痩せて見えるように」「この人だけ消してください」。レタッチの依頼に終わりが無いのは、範囲を決めていないからです。標準に含める作業と、別料金にする作業の線引き。

納品して 2 日後、「もう少し明るくなりませんか」。直して送ると、 「あと、ここのシワも」。さらに翌日、「下の子だけ目を開けている写真と合成できますか」。

どれも無理な相談ではありません。困るのは、どこで終わるのかが誰にも分かっていないことです。

相手は「直す」の重さを知らない

明るさを上げるのと、人を 1 人消すのとでは、かかる時間が 100 倍違います。 ところが依頼する側から見れば、どちらも「画面をちょっといじる作業」に見えます。

悪気があって言っているわけではない。重さが伝わっていないだけです。だから「それは大変なんです」と説明するより、 最初に線を引いておくほうが早い。

範囲を決めていない+その場の要望に応えられる−1 枚に何度も戻る−断る理由がその場で要る−追加料金を言い出しにくい−人によって仕上がりが違う範囲を書いてある+「ここまでです」で終わる+追加は見積もりに乗る+毎回おなじ基準で出せる−最初に決める手間がかかる
決めていないと、断るたびにこちらが理由を考えることになります。

3 段に分ける

細かく分類しても運用できません。「全部やる」「聞いてから」「やらない」の 3 段で足ります。

段内容扱い
基本明るさ・色・傾き・トリミング、肌の軽い調整撮影料に含む。全カットに入れる
応相談写り込んだ人や物の除去、目つぶりの差し替え、体型の補正1 枚いくらで見積もる
受けない別人に見えるほどの加工、第三者の顔の入れ替え断る。理由も添える

肝心なのは真ん中の段があることです。 「できません」と「無料でやります」の 2 択しかないと、 毎回どちらかに倒すことになります。

「基本」に何を入れるか

全カットに入れる作業は、1 枚あたり何秒で終わるかで決めます。 100 枚納品するなら、1 枚 30 秒の作業でも 50 分です。

  • 明るさ・コントラスト・色の傾き ── まとめて当てられる
  • 水平の補正とトリミング ── 数秒
  • 肌の軽いならし ── 一括処理でおおむね済む

逆に、1 枚ずつ手で触る作業は基本に入れない。ホクロを消す、髪の毛を 1 本ずつ取る、背景の看板を消す。 これらは「その 1 枚だけ」の作業なので、枚数に比例して時間が伸びます。

断り方を先に用意する

受けない段のものを頼まれたとき、その場で理由を考えると角が立ちます。書いたものを見せて断るのがいちばん静かです。

写り込んだ他人を消す

「背景の人を消してほしい」は応相談でいい。ただし人物の面積が大きいと、消した跡を作り直すことになります。1 枚 3,000 円といった額を先に出して、それでもやるかを聞く。

体型の補正

受けるかどうかは方針次第です。ただ「自然に見える範囲で」という依頼がいちばん揉めます。自然の基準が人によって違うからです。受けるなら 「1 回だけ直します」と回数を先に切ってください。

顔の差し替え

集合写真で目をつぶった人を別カットから持ってくる作業です。 技術的にはできますが、写っている全員に断りなく行う加工でもあります。 受けないと決めているなら、そう書いておく。

書く場所は 1 か所でいい

長い規約は読まれません。申し込みの案内に 3 行あれば十分です。

  • 明るさ・色・傾きの調整は全カットに入っています
  • 写り込みの除去や目つぶりの差し替えは 1 枚 ◯◯ 円で承ります
  • 別人に見えるほどの加工はお受けしていません

これが撮影前に渡っていれば、納品後のやりとりはほとんど起きません。揉めるのは、決めていなかったからではなく、 決めたことを言っていなかったからです。