ひまわりの表紙のフォトブックを手にしているところ

2026年9月29日

撮った写真の権利は誰のものか ── 著作権と肖像権

データを渡したら著作権も渡るのか。クライアントが加工して使っていいのか。1 枚の写真に別々の権利が 2 つ乗っている、という話から整理します。

「データを買ったんだから、どう使ってもいいですよね」

そう言われて、その場で答えられなかったことはないでしょうか。 断る理由も、許す理由も、はっきり言葉にできない。

もつれるのは、1 枚の写真に別々の権利が 2 つ乗っているからです。そこを分けると、たいていの話は片付きます。

2 つの権利は、持ち主が違う

 著作権肖像権
持っている人撮った人写っている人
守っているもの表現としての写真その人の姿
渡せるか渡せる(契約で)渡せない。許可を出すだけ

七五三の写真なら、著作権はカメラマン、肖像権はお子さんと ご家族にあります。どちらか一方だけでは、自由に使えません。

だから、カメラマンが作品として勝手に公開することもできないし、 家族が加工して配ることもできない。お互いに、相手の許可が 要る関係です。

データを渡しても、著作権は動かない

ここが一番誤解されます。データの受け渡しと、権利の移転は別の話です。

本を買っても本の著作権は手に入りません。それと同じで、 写真データを買った人が手にするのは「使っていいという許可」であって、著作権そのものではありません。

著作権を移すには、契約書に「譲渡する」と書く必要が あります。黙っていれば移りません。

譲渡するときに落ちやすい一文

もし譲渡を求められたら、条文の番号まで書いてください。

「著作権(著作権法第 27 条および第 28 条の権利を含む)を譲渡する」

この 2 つは、ただ「著作権を譲渡する」と書いただけでは譲った側に残ると法律が定めています。27 条は作り変える 権利、28 条はその作り変えたものに対する権利です。

つまり書き漏らすと、渡したつもりでも加工の権利だけ手元に 残ります。後から「これは譲渡に含まれていない」と揉める形に なるので、譲るなら書き切る、譲らないなら譲らないと、はっきり させたほうが安全です。

譲渡しても消えない権利がある

著作者人格権は譲渡できません。名前を出すかどうか、 勝手に改変されない、といった部分です。これは法律上、作った人から 離れません。

実務では「行使しない」と約束する形(不行使特約)が使われますが、 ここまで来ると契約書の話です。金額に見合わないと感じたら、譲渡ではなく「使える範囲を広く許可する」で足りないか 考えてみてください。たいていは足ります。

「どこまで使っていいか」を先に決める

権利を譲らずに済ませるなら、代わりに使ってよい範囲を 示します。これを撮影前に渡しておくと、後の質問がほぼ消えます。

使い方よくある扱い
家族で見る・プリントする自由
年賀状・アルバムにする自由
SNS に載せる自由。ただし加工の扱いを決めておく
商用で使う別途相談(店舗の広告、商品に載せる等)
他人に売る・配る不可

商用だけ分けているのは、写真が売上を生む側に回るからです。個人の記念と同じ値段でいいのか、という話が出てくるので、 そこだけ「相談」と書いておけば、金額の話を後からできます。

加工の扱いは決めておく

SNS に載せるときのフィルターやトリミングをどうするか。厳しく 禁じるカメラマンもいますが、実務では止まりません。止まらないものを禁止すると、守れない約束が 1 つ増えるだけです。

現実的なのは、「加工して載せるときは撮影者名を出さない」という形です。自分の表現として世に出るものだけ守れれば、目的は 果たせます。

実際に困る場面

「他の家族にも配りたい」

祖父母や親戚に渡したい、という話はよく出ます。これは断らなくていい場面だと思います。写真を頼んだ 目的そのものですし、止める手段もありません。

気にするとしたら「配った先がさらに配る」ことですが、そこまでは追えません。追えないものを規約に書くと、 破られる前提の条文になります。

「会社のホームページに使いたい」

これは商用です。金額の話をしてよい場面で、断る話では ありません。撮影時に想定していなかった使い方なら、追加の許諾として 別に見積もれば済みます。

「もう写真を消してほしい」

肖像権の側からの要求です。納品済みのデータは戻せませんが、こちらが公開している作例からは外せます。

外す手順をあらかじめ決めておくと、言われたときに慌てません。 連絡先を 1 つ書いておくだけでも違います。

まとめると、書いておくのは 3 行

  • 写真の著作権はカメラマンにあり、譲渡はしないこと
  • 個人の記念としては自由に使えること
  • 商用で使うときは別途相談すること

申し込みの時点でこれが渡っていれば、納品後のやりとりはほとんど起きません。揉めるのは、決めていなかったからではなく、決めたことを伝えていなかったからです。

この記事は一般的な整理で、個別の契約の効力を判断するものでは ありません。譲渡や商用利用で金額が大きくなる場合は、弁護士に ご相談ください。写真の納品・販売サービス Utsurie(うつりえ) では、利用範囲をギャラリーごとに書いて渡せるようにしています。 関連して 納品したデータをいつまで持っておくべきか もあわせてどうぞ。