夕暮れの水辺で、カメラを提げて立っている人の影

キャンセル料は、いつから何 % か

前日の夜に「熱が出てしまって」と連絡が来たとき、その場で決めると必ず取れません。何日前から何 % にするかを、空けた枠の値段から逆算します。

前日の夜、連絡が来ます。「すみません、子どもが熱を出してしまって」

断る理由としては、これ以上ないほど正当です。そしてこの瞬間に「キャンセル料をいただきます」とは言えません。相手も困っていて、こちらも人間だからです。

だからその場で決めてはいけません。決めるのは、申し込みを受け付けるより前です。

何を失ったのかを、先に数える

キャンセル料は「迷惑料」ではありません。その日を空けたために失ったものの代金です。ここを 取り違えると、額の根拠がなくなって請求できなくなります。

失うものは 3 つあります。

  • 枠そのもの。土日の 1 枠は月に 8 つしかない。前日に 空いても、埋め直せない
  • すでに使った時間。打ち合わせ、下見、ロケハン、 当日の段取り
  • 出ていったお金。交通費の先払い、機材の手配、 場所の押さえ

直前になるほど 1 つめが効いてきます。1 か月前のキャンセルと前日のキャンセルは、まったく違う出来事です。だから料率も日数で変えます。

日数で区切る

撮影日8 日前まで無料7〜2 日前30%前日50%当日100%
金額ではなく撮影料に対する割合で決めておくと、案件ごとに計算し直さずに済みます。

これは出発点で、正解ではありません。枠の埋まり方で変えてください。週末しか撮らないなら手前を厳しく、平日も動けるなら緩くする。

「無料の範囲」を必ず作る

全部の日数で取ろうとすると、逆に取れなくなります。1 週間以上前なら無料、と先に言っておくと、早めに連絡が来ます。早く分かれば埋め直せるので、こちらの損も小さくなります。

無料の範囲がないと、相手は言い出しにくくなって連絡が遅れます。黙って当日になるのが、いちばん高く付きます。

当日 100% は書いておく

実際に満額もらうかどうかは別として、書いていない額は請求できません。書いてあるものを「今回はけっこうです」と引くことはできますが、 書いていないものを後から足すことはできません。

払い過ぎの規定は、無効になることがある

消費者契約法では、解約に伴う違約金のうち事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分は無効とされています。「1 か月前でも 100%」のような規定は、書いてあっても 通らない可能性があります。

つまり逆算しておくこと自体が、規定を守る手段になります。枠 1 つの値段と、実際に出ていった費用。そこから出した割合なら、 根拠を説明できます。

金額の妥当性が気になる規模(高額な撮影、法人との取引)なら、 一度だけ専門家に見てもらうのが確実です。個人の家族写真の範囲で、 撮影料から逆算した割合であれば、大きく外れることはまずありません。

天候は、キャンセルではない

雨で流れるのはどちらの落ち度でもありません。これをキャンセル料の話に混ぜると、必ず揉めます。別の決まりにしてください。

決めること書き方の例
誰が決めるか撮影日の前日 18 時までに、こちらから連絡します
どうなるか順延。キャンセル料はいただきません
振替が合わないとき全額返金。手数料は差し引きません
雨でも撮る場合屋根のある場所に変更。追加料金なし

判断する人と時刻を決めておくのが要点です。 「当日の朝に相談」にすると、両方が相手の出方を待って、 誰も決めないまま時間が過ぎます。

どこに書くか

申し込みを受ける前に、相手の目に入る場所に置きます。 撮影後に規約を見せても意味がありません。

  • 料金ページの、金額のすぐ下
  • 申し込みの返信メールの本文(リンクではなく本文に)
  • 通信販売の形で受けているなら、特定商取引法に基づく表記

長い規約にしないでください。4 行で足ります。読まれない規約は、無いのとほぼ同じです。

実際に請求するときの一言

いちばん難しいのはここです。相手は困っていて、こちらは気まずい。

自分の判断として伝えないことです。「規定でこうなって います」と、先に決めてあった事実として伝える。だから先に決めておく 価値があります。その場で考えると、必ず 0 円になります。

そして次の予約につなげてください。「振替でしたら、キャンセル料は振替後の撮影料に充当します」と言えば、 相手も救われるし、枠も埋まります。取ることが目的ではありません。

取らないと決めるのも、決めたことになる

「うちはキャンセル料をいただきません」も立派な方針です。書いてあれば、それは決断です。まずいのは、決めていないまま毎回その場で悩むことだけです。